高齢者の急変対応と医療機関との連携:老人ホームにおける適切な対応と課題

ドクター、ナース、救急救命士の方に質問です。私は老人ホームナースです。先日、利用者Aさんが連日繰り返す嘔吐があり、昨日は嘔吐、背部痛、SpO2 85%でした。O2投与し様子観察しましたが、SpO2 75%まで下がり提携HPへ受診要請、当直Dr.へバイタル、状態報告するも午後の外来まで待てと受診拒否されました。明らかにAさんの様子はいつもとは違い一刻を争う状態と判断し救急要請しました。提携先へ搬送されましたが当直医から「なぜ15時まで待てないんだ!施設の都合で連れて来たんだから部屋なんか空いてないから点滴やって帰ってよ。この人は高齢で血管もろくてSpO2が機械でひろえないんだからいくら酸素投与しても無駄なんだよ」と言われ酸素を外されました。それからAさんは死戦期呼吸になりました。再度Dr.へ呼吸がおかしいと言うと、「これは普通だから」と。その数分後Aさんは眠るように亡くなりました。家族や老人ホーム長が来たら当直医の態度は急変。自分が最善を尽くしましたなどと美辞麗句を言い始めました。非常に憤慨しています。高齢者の血管は確かに細くてもろいですが現在のサチュレーション機器でひろえない、エラーになる血管ってあるんですか?

高齢者における急変対応の難しさ

高齢者の急変は、若い世代とは異なる特徴を示すため、迅速かつ的確な対応が求められます。特に、循環器系や呼吸器系の機能低下は、症状の出現が急激でなく、かつ、症状が非特異的なため、見逃されやすいという課題があります。今回のケースでは、嘔吐、背部痛、SpO2低下という複数の危険信号が示唆されていたにも関わらず、適切な対応が遅れたことが大きな問題です。

高齢者のSpO2測定における注意点

ご質問にある「高齢者の血管は細くてもろく、SpO2が機械でひろえない」という点について解説します。高齢者の血管は加齢に伴い、弾力性が低下し、細くなりがちです。そのため、SpO2測定器のプローブを装着する際に、適切な位置に装着できない、あるいは、測定値が正確に得られない場合があります。しかしながら、現在のSpO2測定器は、エラーになるような血管は稀です。 測定値が不安定な場合、測定部位の変更や、別の測定方法(例えば、耳介など)を試みるべきです。SpO2が正確に測定できないからといって、酸素投与を中断することは、患者の状態を悪化させる可能性があり、決して適切な対応とは言えません。

医療機関との連携における課題

今回のケースでは、提携医療機関との連携に大きな問題がありました。当直医による受診拒否、そして、搬送後の不適切な対応は、医療提供体制の大きな欠陥を露呈しています。高齢者の急変対応においては、医療機関との迅速かつ円滑な連携が不可欠です。事前に連携体制を明確化し、緊急時の連絡窓口を明確にすることが重要です。また、医療機関との定期的な情報共有や合同研修を行うことで、お互いの理解を深め、迅速な対応につなげることが重要です。

老人ホームにおける具体的な対応策

老人ホームにおいて、高齢者の急変に適切に対応するためには、以下の対策が重要です。

1. 迅速な初期対応

  • バイタルサインの正確な測定と記録:SpO2測定だけでなく、脈拍、呼吸数、血圧なども正確に測定し、記録します。変化を早期に検知するために、定期的なバイタルサインチェックは不可欠です。
  • 症状の観察と記録:嘔吐、呼吸困難、意識レベルの変化など、全ての症状を詳細に記録します。写真や動画を記録することも有効です。
  • 緊急時対応マニュアルの作成と研修:施設内に緊急時対応マニュアルを作成し、全職員が理解し、実践できるよう定期的な研修を実施します。

2. 医療機関との連携強化

  • 明確な連絡体制の構築:緊急時連絡先、担当医、連絡方法などを明確に記載した連絡票を作成します。
  • 定期的な情報共有:患者の状態、治療経過などを定期的に医療機関と共有します。特に、急変リスクの高い患者については、密に情報交換を行う必要があります。
  • 合同研修の実施:医療機関と連携して、定期的に合同研修を実施し、高齢者の急変対応に関する知識・スキルの向上を図ります。

3. 事後対応

  • 詳細な記録の作成:患者の状態、対応内容、医療機関とのやり取りなどを詳細に記録します。これは、今後の対応改善や、万一の訴訟対策にも役立ちます。
  • 関係者への報告:家族、施設長、関係機関などに、事実に基づいた報告を行います。
  • 対応の見直しと改善:今回のケースを踏まえ、緊急時対応マニュアルや連携体制を見直し、改善します。

専門家の視点:医療現場の現状と課題

高齢化社会の進展に伴い、高齢者の急変対応はますます重要になっています。しかし、医療現場では、医師不足、病院のベッド不足など、様々な課題を抱えています。今回のケースは、そうした医療現場の現状と、老人ホームと医療機関との連携における課題を浮き彫りにしています。

高齢者の医療は、チーム医療が不可欠です。医師、看護師、介護職員、そして家族が連携し、患者中心の医療を提供することが重要です。そのためには、医療機関と介護施設間の連携強化、そして、医療従事者間のコミュニケーションの改善が不可欠です。

まとめ

今回のケースは、高齢者の急変対応の難しさ、そして医療機関との連携の重要性を改めて示しています。老人ホームでは、迅速な初期対応、医療機関との連携強化、事後対応の徹底など、様々な対策を講じる必要があります。そして、医療機関側も、高齢者の急変対応に十分な体制を整えるとともに、介護施設との連携を強化する必要があります。

患者の命を守るためには、全ての関係者が責任を持って行動し、連携していくことが不可欠です。 今回の悲しい出来事が、今後の高齢者医療の改善につながることを願っています。

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