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不動産におけるバリアフリーの定義と現状
まず、不動産会社における「バリアフリー」の定義についてですが、残念ながら明確な法的基準は存在しません。一般的には、車椅子使用者などが移動や生活しやすいように、段差の解消、広い廊下やドア、手すりの設置など、物理的な改修が行われている状態を指します。しかし、その程度は物件によって大きく異なり、不動産会社による解釈も様々です。
今回のケースのように、車椅子使用者への賃貸を拒否する不動産会社は、残念ながら少なくありません。「床が傷つく」「他の入居者が嫌がる」といった理由が挙げられますが、これは明確な差別であり、法律に抵触する可能性があります。
車椅子ユーザーにとっての「住みやすさ」とは?
バリアフリーは、単に物理的な改修だけでなく、住む人の生活全体を考慮する必要があります。例えば、
- 玄関:車椅子でのスムーズな出入りのための広さ、段差の有無
- 廊下:車椅子の旋回スペースの確保、手すりの設置
- トイレ:車椅子対応トイレの有無、手すりの設置、適切な高さの便座
- 浴室:車椅子対応の浴室の有無、手すりの設置、滑り止め
- キッチン:車椅子での作業スペースの確保、使いやすい高さのカウンター
- その他:収納スペースの使いやすさ、スイッチやコンセントの位置
などが重要です。これらの要素が総合的に考慮され、安心して生活できる環境が整備されていることが理想です。
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法律と権利擁護
残念ながら、現状では、不動産会社が車椅子使用者への賃貸を拒否する行為を直接禁じる法律はありません。しかし、「障害を理由とする差別は許されない」という基本的な考え方が、憲法や障害者差別解消法(2024年4月施行予定)に示されています。
障害者差別解消法(2024年4月施行予定)
2024年4月施行予定の障害者差別解消法は、事業者に対して、合理的配慮を行うことを義務づけています。合理的配慮とは、障害のある人が社会参加できるよう、事業者が行うべき対応のことです。
この法律に基づき、不動産会社は、車椅子使用者への賃貸を拒否する際に、正当な理由を示す必要があります。「床が傷つく」や「他の入居者が嫌がる」といった理由だけでは、正当な理由とは認められません。
具体的な対応策
もし、賃貸を拒否された場合は、以下の対応を検討しましょう。
- 他の不動産会社に相談する:複数の不動産会社に相談することで、より適切な物件が見つかる可能性があります。
- 弁護士に相談する:法律的な観点からアドバイスを受けることができます。
- 障害者団体に相談する:相談窓口や支援制度を紹介してもらえます。
- 国土交通省などの行政機関に相談する:不動産会社への指導を依頼することができます。
具体的な解決策とアドバイス
まず、「車椅子不可」と明示されていない物件を探しましょう。多くの物件は、バリアフリー対応ではないものの、工夫次第で車椅子での生活が可能になるケースもあります。
物件選びのポイント
- 広さ:車椅子がスムーズに移動できる広さがあるか
- 段差:玄関、浴室、トイレなどの段差の有無、解消の容易さ
- ドアの幅:車椅子が通れる幅があるか
- トイレ:車椅子対応トイレの有無、手すりの設置状況
- 浴室:車椅子対応浴室の有無、手すりの設置状況
これらの点を重視して物件を選び、必要に応じて簡単な改修を行うことで、住みやすい環境を作ることができます。例えば、厚手のマットを敷く、手すりを設置するなどは、比較的容易に行えます。
専門家の活用
必要に応じて、バリアフリー改修専門業者に相談しましょう。専門業者は、最適な改修方法や費用などをアドバイスしてくれます。また、福祉用具レンタル業者を利用することで、必要な福祉用具を借りることができます。
交渉のポイント
不動産会社との交渉においては、冷静かつ丁寧に対応することが重要です。24時間介護者がいること、安全に配慮していることなどを伝え、誤解を解く努力をしましょう。また、障害者差別解消法について説明し、法的根拠に基づいた交渉を行うことも有効です。
まとめ
車椅子ユーザーにとって、適切な住まいを探すことは容易ではありません。しかし、法律の改正や社会意識の高まりによって、少しずつ状況は改善しつつあります。諦めずに、様々な手段を活用し、自分にとって最適な住まいを見つける努力を続けましょう。2024年4月からの障害者差別解消法施行も踏まえ、積極的に権利を主張し、安心して暮らせる社会の実現を目指しましょう。