築古アパートの修繕義務と入居者対応:大家さんのためのガイド

アパートの修理はどこまでが義務ですか?東京都内で築50年の古いアパートを経営しています。(間取りは6畳と4.5畳に台所とトイレ) 全部で4室あり、家賃は3万円台後半~4万円台前半くらいで貸しています。アパート住人の中に、過剰にアパートの修理を強要する人がいて、どうするべきなのか悩んでいます。①天井にしみがある、雨漏りすると困るから修理してくれと言われ屋根の葺き替えをさせられる(総額120万円) ②アパート外壁にひびが入っている。危険だから修理してくれと言われ外壁の補修をさせられる。(総額110万円) ③部屋の網戸の開け閉めがスムーズにできないので全て新品に交換してほしいと言われる。(総額10万円) ④部屋の天井(天板)がたわんでいるので新しくしてほしいと言われる。(現在検討中) 以上、今年に入ってから現在までに修理させられたものです。他にも細かいことをいろいろと要求してきます。(主に修理依頼) 収入よりも支出のほうが多いくらいです。確かに、悪いところを全て直せば安心して住めるのでしょうが、古い賃貸物件だということは承知の上で入居されているわけですし、実際に雨漏りがしているわけでもなく、建物が崩れているわけでもないのにそこまで修理する必要があるのか疑問です。(他の住人の方からはは何も苦情はありません)大家として、アパートの修理はどこまでが義務なのでしょうか? ※不動産屋を介しての契約ですが自宅の隣がアパートの為、直接本人が言いに来るので断りにくいです…。

築古アパートにおける修繕義務:法律と現実

築50年のアパート経営、特に過剰な修繕要求への対応は悩ましい問題です。大家さんの修繕義務は、民法や借地借家法で定められています。簡単に言うと、「居住の安全・衛生を確保するために必要な修繕」が大家さんの義務です。しかし、「必要な修繕」の範囲は、状況によって大きく異なり、明確な基準はありません。

大家さんの修繕義務とは?

借地借家法では、以下の修繕義務が大家さんに課せられています。

  • 主要構造部分の修繕:建物の基礎、柱、梁、屋根など、建物の安全性を支える重要な部分の修繕は、大家さんの義務です。雨漏りや倒壊の危険性がある場合は、速やかに対応する必要があります。
  • 共用部分の修繕:廊下、階段、外壁、排水管など、複数の入居者が共有する部分の修繕も大家さんの義務です。これらは、建物の安全・衛生に直結する重要な部分です。
  • 設備の修繕:給排水設備、ガス設備、電気設備など、居住に不可欠な設備の故障や不具合に対する修繕も、大家さんの責任です。ただし、入居者の故意または過失による故障は、入居者の負担となる場合があります。

ケーススタディ:質問内容の分析

質問にあるケースを、上記の観点から分析してみましょう。

  • ①屋根の葺き替え(120万円):雨漏りが確認されていなければ、現状では大家さんの修繕義務には該当しません。しみがある程度であれば、現状維持で問題ない可能性が高いです。ただし、将来的に雨漏りの可能性がある場合は、修繕計画に含めるべきでしょう。
  • ②外壁の補修(110万円):ひび割れが深刻で、建物の構造に影響を与え、安全性が脅かされていると判断できる場合のみ、大家さんの修繕義務となります。専門業者による調査が必要でしょう。
  • ③網戸交換(10万円):網戸は、建物の主要構造部分や共用部分、必須設備には該当しません。そのため、大家さんの修繕義務とは言い切れません。ただし、老朽化が著しく、安全上の問題がある場合は、検討の余地があります。
  • ④天井のたわみ:天井のたわみは、安全性の問題に直結する可能性があります。専門家による調査を行い、危険性がある場合は修繕する必要があります。

入居者との適切なコミュニケーションと対応

過剰な修繕要求には、毅然とした態度で対応することが重要です。

専門家の意見を参考に

修繕が必要かどうか判断に迷う場合は、不動産管理会社や建築士などの専門家に相談しましょう。専門家の意見を参考に、客観的な判断基準を設けることで、入居者とのトラブルを回避できます。写真や動画で状況を記録しておくことも有効です。

文書による記録を残す

入居者とのやり取りは、全て文書で記録しておきましょう。メールや手紙などで、修繕依頼の内容、対応内容、費用、日時などを明確に記載し、証拠として残しておくことが重要です。

冷静な対応と明確な説明

入居者に対しては、冷静に、かつ明確に説明することが大切です。修繕義務の範囲、費用負担の割合、修繕計画などを具体的に説明することで、誤解を防ぎ、納得してもらうことができます。

交渉のポイント

交渉の際には、以下の点を意識しましょう。

  • 法律に基づいた説明:借地借家法に基づいた大家さんの義務と、入居者の権利を明確に説明します。
  • 専門家の意見の提示:専門家の意見書などを提示することで、客観的な判断基準を示すことができます。
  • 代替案の提示:修繕費用が高額な場合は、代替案を提示することで、入居者の負担を軽減することができます。
  • 長期的な視点:建物の老朽化を考慮し、長期的な修繕計画を立て、入居者と共有することで、信頼関係を築くことができます。

具体的な対応策

今回のケースでは、まず、専門家(建築士など)に依頼して、建物の状態を詳細に調査してもらいましょう。その結果に基づいて、必要な修繕を優先順位をつけて行う計画を立てます。

例えば、雨漏りの可能性がある屋根は、将来的に修繕が必要となる可能性が高いので、修繕計画に含めるべきです。しかし、すぐに対応が必要なものではないため、入居者にはその点を丁寧に説明し、理解を得る努力が必要です。

外壁のひび割れについても、専門家の診断に基づいて、安全上の問題がないことを説明することが重要です。網戸の交換は、必要性の低い修繕として、現状維持を提案し、どうしても交換を希望する場合は、入居者負担とすることを検討しましょう。

天井のたわみは、安全性の問題に直結する可能性があるため、専門家の診断に基づいて、対応を決定する必要があります。

まとめ

築古アパートの経営は、修繕問題と常に隣り合わせです。法律に基づいた対応を心がけ、専門家の意見を参考にしながら、入居者との良好な関係を築くことが重要です。冷静な対応と明確な説明、そして文書による記録を徹底することで、トラブルを回避し、安心してアパート経営を続けることができるでしょう。

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