オーナーの「ダサい」提案に悩むインテリアデザイナーの皆さんへ

改装物件のインテリアデザインにおいて、オーナーの意向とデザイナーとしてのプロ意識の間に挟まれ、苦慮されている方も多いのではないでしょうか。特に、オーナーが具体的なデザイン案を提示し、それがデザイナーの美的センスや専門知識と大きくかけ離れている場合、どのように対応すべきか悩ましいところです。本記事では、オーナーの「ダサい」と感じる提案をうまく捌き、理想のデザインを実現するための具体的な方法を、事例を交えながら解説します。

「ダサい」提案の真意を探る：オーナーのニーズを理解する

まず重要なのは、オーナーの提案の背景にあるニーズを理解することです。一見「ダサい」と感じられる提案にも、オーナーなりの理由やこだわりが隠されている可能性があります。例えば、

• コスト削減：高価な素材や工法を避け、コストを抑えたいと考えている可能性があります。
• 個人的な好み：過去の経験や思い出、あるいは単なる好みから、特定のデザインに強いこだわりを持っている可能性があります。
• ターゲット層への訴求：特定の顧客層をターゲットにしている場合、その層に受け入れられやすいデザインを提案している可能性があります。
• 機能性への重視：デザインよりも機能性を重視し、使い勝手の良い空間を優先している可能性があります。

これらのニーズを丁寧に聞き取り、理解することで、オーナーの提案を否定するのではなく、建設的な議論を進めることができます。

オーナーの提案を「昇華」させるための具体的なテクニック

オーナーの提案を完全に無視することは、良好なクライアント関係を築く上で好ましくありません。そこで、以下のテクニックを用いて、オーナーの提案を「昇華」させ、より洗練されたデザインに仕上げることを目指しましょう。

1. 共通の土台を見つける：類似点を探して提案を繋げる

オーナーの提案の中に、デザインのコンセプトや素材、色使いなど、あなたのデザイン案と共通する部分を探してみましょう。たとえ些細な部分であっても、それを起点に議論を進めることで、オーナーとの距離を縮めることができます。例えば、「オーナーが気に入っている素材の色味を、より洗練された方法で取り入れる」といった提案は効果的です。

2. 代替案を提示する：デザインのメリットを明確に説明する

オーナーの提案を直接否定するのではなく、代替案を提示することで、より良いデザインを実現できます。その際、単に「こっちの方が良い」と言うのではなく、代替案のメリットを具体的に説明することが重要です。例えば、 * 「この素材は、オーナーの希望であるコストを抑えつつ、より高級感のある仕上がりになります。」 * 「この色使いは、最新のトレンドを取り入れつつ、オーナーの希望である温かみのある雰囲気を演出できます。」 * 「このレイアウトは、オーナーの希望である機能性を維持しつつ、より広々とした空間を実現できます。」 といったように、具体的なデータやビジュアルを用いて説明することで、オーナーの理解と納得を得やすくなります。

3. 専門家の視点で説得する：デザインの根拠を示す

インテリアデザインは、単なる好みだけでなく、専門的な知識や技術に基づいて行われるものです。オーナーの提案がデザインの原則に反している場合、その点を丁寧に説明し、専門家の視点から説得を試みましょう。例えば、 * 「この配置は、動線の効率が悪くなるため、使い勝手が悪くなります。」 * 「この素材は、耐久性が低いため、長期間の使用に耐えられません。」 * 「この色使いは、空間のバランスが悪くなり、圧迫感を与えてしまいます。」 といったように、具体的なデータや根拠を示すことで、オーナーの理解を得やすくなります。

4. 資料や事例を用いる：ビジュアルで訴求する

言葉だけでは理解しにくい場合、資料や事例を用いて視覚的に説明することで、オーナーの理解を深めることができます。例えば、 * あなたのデザイン案とオーナーの提案を比較した資料 * 類似のデザイン事例 * 色使いや素材のサンプル などを用いることで、より効果的に説明できます。

5. 妥協点を見つける：双方の意見を尊重する

全ての提案を完全に自分の意図通りに実行することは難しい場合があります。オーナーとの意見の相違がどうしても解消できない場合は、妥協点を見つける努力をしましょう。例えば、 * オーナーの提案の一部を取り入れ、デザインにアレンジを加える * オーナーの提案を別の場所で実現する * 代替案として、オーナーの提案と似た要素を持つデザインを提案する

事例：オーナーの「ダサい」提案を成功に導いたケース

ある改装物件で、オーナーは70年代風のレトロなデザインを強く希望していました。一見「ダサい」と感じましたが、オーナーは「若い頃、この時代のデザインに憧れていた」と語りました。そこで、私は70年代のデザインを現代風にアレンジした代替案を提案しました。レトロな要素を残しつつ、洗練された素材や色使いを取り入れることで、オーナーの希望と現代的なデザインを融合させることに成功しました。

まとめ：信頼関係を築き、理想のデザインを実現する

オーナーの「ダサい」提案にうまく対処するには、オーナーのニーズを理解し、代替案を提示し、専門家の視点から説得するなど、様々なテクニックが必要です。そして何より重要なのは、オーナーとの信頼関係を築くことです。丁寧なコミュニケーションを心がけ、双方の意見を尊重することで、理想のデザインを実現できるでしょう。