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引越し時の清掃:原状回復義務と具体的な範囲
賃貸マンションを退去する際、部屋の清掃は必要です。しかし、「きれいに清掃する」という表現は曖昧で、法律上は「原状回復義務」という明確な基準があります。これは、借主が賃貸物件を借りた当初の状態に戻す義務を指します。単なる清掃ではなく、損耗や劣化を除いた状態に戻すことが求められます。
原状回復義務の範囲
原状回復義務の範囲は、以下の点を考慮して判断されます。
- 通常の使用による損耗:これは借主の責任ではありません。例えば、壁のわずかな汚れやフローリングの小さな傷などは、通常の使用によるものとみなされ、原状回復義務の対象外となることが多いです。ただし、過度な汚れや傷の場合は、借主の責任となる可能性があります。
- 故意または過失による損傷:これは借主の責任となります。例えば、壁に大きな穴を開けたり、床に大きな傷をつけたりした場合などは、修理費用を負担する必要があります。
- 経年劣化:これは借主の責任ではありません。例えば、建物の老朽化による壁のひび割れや、フローリングの色あせなどは、経年劣化とみなされ、原状回復義務の対象外です。
具体的な清掃について
では、具体的にどのような清掃が必要なのでしょうか? 一般的には、以下の作業が求められます。
- 床の清掃:掃除機掛け、モップ掛けなどを行い、汚れを落とします。ひどい汚れの場合は、ワックスがけが必要になることもあります。
- 壁の清掃:汚れを拭き取ります。タバコのヤニや油汚れなどは、専門業者に依頼する必要があるかもしれません。
- キッチン、浴室、トイレの清掃:水垢やカビなどを丁寧に落とします。排水口の清掃も重要です。
- 窓の清掃:ガラスの汚れを拭き取ります。
- ゴミの処理:全てのゴミを処分します。
しかし、これらはあくまでも一般的な例です。具体的な清掃範囲は、賃貸借契約書や物件の状態、そして裁判例などを考慮して判断する必要があります。
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敷金・礼金の返還:減額されるケースとされないケース
敷金は、家賃の滞納や物件の損傷に対する保証金として預けられます。礼金は、賃貸契約締結の対価として支払われます。
敷金が返還されないケース
敷金は、原状回復費用を差し引いた上で返還されます。以下の場合、敷金が減額される可能性があります。
- 故意または過失による損傷:前述の通り、壁に大きな穴を開けたり、床に大きな傷をつけたりした場合などは、修理費用が敷金から差し引かれます。
- 通常の使用を超える損耗:通常の使用を超える汚れや傷がある場合も、修理費用が敷金から差し引かれる可能性があります。例えば、ペットを飼っていた場合の汚れや臭いなどです。
- クリーニング費用:通常の清掃では落とせない汚れがある場合、専門業者にクリーニングを依頼する費用が敷金から差し引かれることがあります。
礼金が返還されないケース
礼金は、契約時に支払われた対価であり、原則として返還されません。ただし、契約内容によっては、例外的に返還される場合があります。
専門家への相談
敷金・礼金の返還に関してトラブルが発生した場合、弁護士や不動産会社などに相談することをお勧めします。彼らは法律に基づいた適切なアドバイスをしてくれます。
具体的なアドバイスと事例
1. 賃貸借契約書をよく確認する
契約書には、原状回復に関する規定が記載されている場合があります。契約書をよく読み、不明な点は不動産会社に確認しましょう。
2. 写真や動画で証拠を残す
入居時と退去時の物件の状態を写真や動画で記録しておきましょう。これらは、後日のトラブルを避ける上で非常に役立ちます。
3. 清掃はプロに依頼するのも有効
時間がない、または清掃に自信がない場合は、専門の清掃業者に依頼することを検討しましょう。費用はかかりますが、トラブルを回避できる可能性が高まります。
4. 争いが生じた場合の対応
もし、敷金・礼金の返還に関して家主と意見が合わない場合は、まず話し合いで解決を図りましょう。それでも解決しない場合は、弁護士や不動産会社などに相談し、必要であれば裁判を起こすことも検討しましょう。
事例: ある借主が、退去時に壁に小さな穴を発見され、修理費用として敷金から1万円が差し引かれました。しかし、借主は、その穴は通常の使用によるものだと主張し、弁護士に相談した結果、家主と交渉し、敷金の減額を撤回させることができました。
まとめ
引越し時の清掃や敷金・礼金の返還は、法律に基づいた複雑な問題です。賃貸借契約書をよく確認し、不明な点は専門家に相談することが重要です。写真や動画で証拠を残すこと、そして、プロの清掃業者に依頼することも有効な手段です。 トラブルを未然に防ぎ、スムーズな退去を実現しましょう。