建築インテリアデザインを学ぶ上で、実際に建物や住宅を見ることは非常に重要です。教科書だけでは得られない、空気感、素材感、空間の広がりなどを肌で感じ取ることが、デザインセンスを磨く上で不可欠だからです。しかし、「ただ見る」だけでは効果がありません。建築物を効果的に観察するには、意識的に見ていく必要があります。
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建築物の見方:五感をフル活用しよう
建築物を観察する際には、単に目だけで見るのではなく、五感をフル活用することが大切です。例えば、
- 視覚:建物の全体像、ファサードのデザイン、窓やドアの位置、素材感、色使い、光の入り方などをじっくり観察しましょう。写真撮影も有効です。様々な角度から撮影することで、気づかなかったディテールを発見できることもあります。
- 触覚:可能であれば、建物の素材(壁、床、手すりなど)に実際に触れてみましょう。素材の質感、温度、滑らかさなどを肌で感じることが、デザインに深みを与えます。特に、石材、木材、金属など、様々な素材の触感の違いを意識的に感じてみてください。
- 聴覚:建物の周囲の音環境に注目してみましょう。静寂な空間、賑やかな空間、風の音、鳥のさえずりなど、音環境は空間の印象を大きく左右します。静かな空間を作るための工夫や、逆に賑やかさを活かしたデザインなど、音環境とデザインの関係性を考えてみましょう。
- 嗅覚:建物の素材や周囲の環境から発せられる匂いを意識してみましょう。木材の香り、土の香り、花の香りなど、匂いは空間の印象に大きく影響を与えます。匂いをデザインに取り入れることは、近年注目されている「香りデザイン」という分野にも繋がります。
- 味覚:これは直接的に建築物に関係するものではありませんが、建物の周辺環境にあるカフェやレストランなどで食事をすることで、その場所の雰囲気や文化を理解する上で役立ちます。例えば、カフェのインテリアとコーヒーの味、建物の雰囲気との調和などを観察してみましょう。
建築物の観察ポイント:具体的なチェック項目
建築物を観察する際には、以下の点を意識的にチェックしてみましょう。
1. 外部空間
- ファサードデザイン:建物の正面のデザイン。素材、色、形状、窓の配置など。
- アプローチ:建物の入り口までの動線。どのように導線が設計されているか。
- 周辺環境:建物の周囲の環境との調和。自然との調和、街並みとの調和など。
- サインデザイン:建物の看板や案内表示のデザイン。視認性、デザイン性など。
- 植栽:建物の周囲の植栽。種類、配置、季節感など。
2. 内部空間
- 空間構成:部屋の配置、大きさ、高さ、動線など。空間の広がりや繋がりをどのように設計しているか。
- 天井高:天井の高さ。空間の広がりや圧迫感に影響を与える。
- 窓の配置と大きさ:採光、通風、眺望などへの影響。
- 素材:壁、床、天井、家具などの素材。質感、色、デザインなど。
- 照明:照明の種類、配置、明るさなど。空間の雰囲気に大きく影響する。
- 家具:家具の種類、配置、デザインなど。空間の使い勝手や雰囲気に影響を与える。
- 色彩:壁、床、家具などの色使い。空間の雰囲気に大きく影響する。
- 装飾:壁画、彫刻、装飾品など。空間の個性や雰囲気を演出する。
3. 機能性とデザインのバランス
建築物は単に美しいだけでなく、人が快適に生活できるための機能性を備えている必要があります。デザインと機能性のバランスをどのように取っているのかを観察してみましょう。例えば、
- バリアフリー:高齢者や障害者にとって使いやすい設計になっているか。
- 省エネルギー:エネルギー効率の良い設計になっているか。
- 収納:収納スペースが十分に確保されているか。
- 通風:自然の風を利用した通風設計になっているか。
専門家の視点:建築家やインテリアデザイナーの意見を参考に
建築家やインテリアデザイナーのブログ、書籍、講演会などを参考にすると、より専門的な視点で建築物を観察することができます。彼らのデザインに対する考え方や、建築物に対する見方を知ることで、自身のデザインセンスを磨くことができます。例えば、有名建築家のウェブサイトや建築専門誌などを参考にすると良いでしょう。
実践的なアドバイス:建築物観察を効果的に行うための3つのステップ
建築物観察を効果的に行うために、以下の3つのステップを踏んでみましょう。
ステップ1:事前準備
- 観察対象の選定:事前に観察したい建物をリストアップしましょう。様々な建築様式、時代の建物、異なる機能を持つ建物をバランスよく選んで観察することで、より多くの知識を得ることができます。
- 資料収集:観察対象の建築物について、事前に資料を集めておきましょう。建築家の名前、建築時期、建築様式、設計思想などを知っておくことで、観察の際に理解が深まります。インターネット検索や図書館などを活用しましょう。
- スケッチブックと筆記用具の準備:観察中に気づいたこと、感じたことをメモしたり、スケッチしたりしましょう。写真撮影も忘れずに行いましょう。
ステップ2:現場での観察
- 時間帯:時間帯を変えて観察してみましょう。朝、昼、夕、夜と時間帯によって光の当たり方が変わり、建物の印象も大きく変わります。
- 天候:天候によっても建物の見え方が変わります。晴天、雨天、曇天など、様々な天候での観察を通して、建物の表情の変化を捉えましょう。
- 視点:様々な角度から観察してみましょう。正面だけでなく、側面、背面など、様々な角度から観察することで、新たな発見があるかもしれません。
ステップ3:事後整理
- メモとスケッチの整理:観察中にメモした内容やスケッチを整理しましょう。写真と合わせて、観察内容を記録しておきましょう。
- 分析:観察した内容を分析し、デザインのポイントや特徴をまとめましょう。何が良かったのか、何が悪かったのかを具体的に分析することで、自身のデザインスキル向上に繋がります。
- ポートフォリオ作成:観察した建物の写真やスケッチ、分析結果などをまとめたポートフォリオを作成しましょう。これは、就職活動や将来の仕事に役立ちます。
建築物を観察する際には、上記のポイントを参考に、積極的に五感を使い、様々な角度から見て、感じて、考えてみましょう。そうすることで、建築デザインに対する理解が深まり、自身のデザインセンスを磨くことができるはずです。