マンションの段々になった階層設計の理由とは?建築基準法と採光・通風との関係

マンションの段段になっている建て方について 例えば、7階建てで、7階は西側の二部屋がなく、6階は西側の一部屋がない(一番西側の部屋は5階が一番上、その横の部屋は6階が一番上)というような段段になっているマンションを良く見かけますが、何故、そのように建てるのでしょうか?素人の考えだと、MAXで建てた方が売り上げが高いと思ってしまいます。ご存知の方、ご回答お願いします!

マンションの段々設計:建築基準法と採光・通風への配慮

マンションが段々になっている、いわゆる「セットバック」と呼ばれる設計は、単なるデザイン上の工夫ではなく、建築基準法や採光・通風といった重要な要素を考慮した結果であることがほとんどです。一見、無駄なスペースのように見えるかもしれませんが、実は建物の価値を高めるための戦略的な設計手法なのです。

建築基準法と日照権の関係

日本の建築基準法では、隣地への日照権を確保するために、建物の高さや位置に制限が設けられています。特に、日当たりが重要な住宅地では、高層マンションを建設する際に、近隣への日影の影響を最小限に抑えることが求められます。そのため、上層階の一部を後退させることで、隣接する建物への日照を確保し、法令遵守を満たしているのです。

採光と通風の確保:快適な居住空間の実現

段々設計は、日照権の確保だけでなく、各住戸への採光と通風の確保にも大きく貢献します。特に、西側の部屋は、夕方の西日による暑さや、日中の直射日光による室温上昇が問題となることがあります。セットバックによって上層階の一部を後退させることで、低層階への日照を確保し、各住戸に十分な日差しと風を取り込むことができます。これにより、快適な室内環境を実現し、住戸の価値を高める効果が期待できます。

眺望の確保とプライバシーの保護

上層階の一部を後退させることで、低層階からの眺望を確保し、住戸間のプライバシーを保護する効果も期待できます。特に、高層マンションでは、隣接する建物との距離が近くなるため、プライバシーの確保が重要な課題となります。段々設計は、視線の遮蔽効果を高め、住戸の快適性を向上させることに繋がります。

段々設計を採用するメリットとデメリット

マンションの段々設計には、メリットとデメリットの両面が存在します。

メリット

  • 日照権の確保:近隣への日影の影響を軽減し、法令遵守を満たす。
  • 採光・通風の確保:各住戸に十分な日差しと風を取り込み、快適な室内環境を実現する。
  • 眺望の確保:低層階からの眺望を確保し、開放的な空間を提供する。
  • プライバシーの保護:住戸間の視線を遮蔽し、プライバシーを保護する。
  • デザイン性の向上:建物の外観デザインに変化を与え、魅力的な空間を創出する。

デメリット

  • 建築コストの上昇:複雑な設計となるため、建築コストが上昇する可能性がある。
  • 建築面積の減少:セットバックによって建築面積が減少するため、収益性が低下する可能性がある。
  • 施工の複雑化:複雑な形状の建物となるため、施工が複雑化し、工期が長くなる可能性がある。

設計者の視点:コストとメリットのバランス

建築設計者は、建築コスト、法規制、居住者の快適性など、様々な要素を考慮して最適な設計プランを検討します。一見、MAXで建てた方が売り上げが高いように思えますが、実際には、日照権の問題や、快適な居住空間の提供といった要素が、マンションの価値や販売価格に大きく影響します。

例えば、日照不足の部屋は、たとえ広い部屋であっても、人気が低く、販売価格が低くなる可能性があります。逆に、日当たりがよく、通風も良好な部屋は、人気が高く、販売価格が高くなる傾向があります。そのため、設計者は、コストとメリットのバランスを考慮し、全体として最も収益性の高い設計プランを選択する必要があるのです。

具体的な事例:都心のマンション開発

都心部では、土地の価格が高いため、限られた敷地面積を有効活用することが重要です。しかし、同時に、近隣への影響を最小限に抑えることも必要です。そのため、セットバックを採用することで、建築基準法を遵守しつつ、快適な居住空間を提供するマンションを建設することが可能となります。

まとめ:段々設計は総合的な判断の結果

マンションの段々設計は、建築基準法、採光・通風、眺望、プライバシー、コストなど、様々な要素を総合的に考慮した結果、採用される設計手法です。一見、無駄なスペースのように見えるかもしれませんが、実は、快適な居住空間を提供し、マンションの価値を高めるための戦略的な設計なのです。

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